信田さよ子編『実践アディクションアプローチ』

実践アディクションアプローチ

信田さよ子,2019『実践アディクションアプローチ』金剛出版

アダルトチルドレンに関して調べていた関係でアディクションについての臨床手法が知りたかったので、読んでみたけどかなり面白かった。ここに出てくるアディクションは想像依存に射程が広く、暴力や、共依存に加えて性依存、ゲーム依存、ギャンブル依存などなど。そもそも人間というものが何かしらに依存しないと生きられないのだと感じてくる。ただ、途中までしか読めてない。普通の学問以上に、明確な答えが出しにくいところが難しい(が、私が詳しくないので、そういう風に見えるだけかもしれない)

 

1、総論

信田が自身の半生と重ね合わせながらアディクションアプローチの歴史を語る。95年後にAC概念が流行し、2000年には虐待防止法、2001年にはDV防止法が制定され、ようやく家庭内の暴力の問題が社会的には取り沙汰され解決されたように見えるがそう簡単な話ではない。アディクションの観点から言えば、暴力への嗜癖は加害者だけの問題ではなく、被害者との関係性において成り立つ。そのため、加害者=悪という図式だけでは解決できない。

後半はアディクションアプローチの具体的内容、まず1999年に信田自身が提示した4つの柱として①家族こそファーストクライアント②底つき③イネ―ブリング④自助グループが紹介さる。が、現在では形を変えているようで、②底つきは今では「専門家の怠慢」とされるようになったよう。④は当事者研究に引きつがれている。

また近年盛んなハームリダクション(以下、HR)への言及もある。信田によるHRの重要点は、①アンチ・ゼロトレランス②底つき・イネ―ブリングの消滅③専門家役割の更新④アディクションの健康問題化。信田的にはこのHRは個人の選択に任せすぎている点で不満なよう。

 

2、理論と実践

この章では複数の論者が、それぞれ異なるアプローチ法を紹介している。

・「迫り来る危機を評価する」高野嘉之

リスクアセスメントは学部生の頃に、低線量被曝をテーマにして勉強したけど、DVの世界でも問題になっているとは思っていなかった。カナダでもっとも使われているDV加害者リスクアセスメントであるSARA-V3には24項目のリスク要因があて、それによって加害者と被害者、再犯加害者と非再販加害者を区別する。かなりp値も高く、統計的に信頼がおける。

・「動機づけ面接 アディクション領域における歴史と意義を中心に」高橋郁絵

アディクション当事者はなかなかカウンセリングへ行かない。それは被害者が自己防衛機能として「否認」を行うためである。そのために動機づけ(MI)が必要となる。MIは1970年代にアメリカではじまり、それまで定番だった「飲むか、生きるか」という二者択一を迫るような面接法を捨てた。つまり、本人自身が変化を希望するように「促す」のである。

 当事者研究は「当事者」にスポットを当てたけれど、「当事者になるまで」にスポットを当てるMIはかなり興味深い。

・「認知行動療法 アディクション問題のおける認知とその修正」森田展彰

アディクション治療とための認知行動療法(CBT)。アディクションの人が良く持つ認知の例として、①酒・ギャンブル等のリスクの過小評価②やらずにはいられないという思い込み③コントロールできるという思い込み④飲酒やギャンブルを行う理由付けやいいわけを考える⑤家族や友人がなんとかしてくれる。そして、こうした認知の背景には幼少期のトラウマ的体験や安定したアタッチメント対象をもてなかったことが原因にある。これらの治療法として、リプラス・プリベンションやSeeking Safety(Najavits,2001)が紹介されている。

・「解決志向アプローチ 未来から構成される現在」田中ひな子

解決志向アプローチ(SFA)は、「問題や原因ではなく、解決に焦点を合わせた会話の方法」とのこと。これは「現実は人々のコミュニケーションを通して言語学的に共同制作される」と考える社会構成主義に基づいているらしい。主な技法は①クライエントの言葉を使った質問②ソリューション・トークーゴールとなる解決像を言語化する③例外探しとコーピング・クエスチョン④スケーリングクエスチョンの4つ。

・「ナラティブ・アプローチ 物語を書き換える」野口裕二

アディクションでは1930年代からナラティブを重視していた。では、なぜナラティブは重要なのか?という文章。自分の話をして、人の話を聞くことによって、内在化の物語を外在化の物語へ、「物語の置き換え」が行われていることがポイント。

・「オープンダイアローグ 共鳴する対話たち」斎藤環

一般書をよく書いてるイメージの斎藤環さんのガチな側面。フィンランド発のケア手法のオープンダイアローグ(OD)の紹介。で、この手法がハームリダクションと似ているらしい。OD自体がちょっとイメージできなかった。

・「DV加害者臨床 暴力とアディクション」高野嘉之

高野さん2回目。

・「ハームリダクション 断薬と厳罰にこだわらない第3の道」古藤五郎

いままで何度か出て来たハームリダクションの解説。日本ではまだ「ドラッグ、ダメ、絶対」という考えが主流で、大麻解禁などの議論においてもまだ「ハームリダクション」への言及は少ない気がする。

重要そうなのでそのまま引用する。

これまで述べてきた非処罰化という政策や、断薬にこだわらないプログラム及びその実践は、どれもハームリダクションである。ハームリダクションの直訳は被害(Harm)を減少させること(Reduction)である。ドラッグに関連する被害とは、前述の通り健康・経済・社会に及ぼす被害である。(中略)ハームリダクションは、人を排除するのではなく、被害に注目し、それを減らすことを目指す。(古藤,2019,p.112)

 

(終わりに)

疲れてしまったので、ここぐらいまでしか読めていない。分からない所が多かったので、もう少し簡単なやつから読んでも良かったかもしれない。第5部は読んだ。結構業界の裏話っていう感じで、結構面白かった。